ダイエットの基礎知識

睡眠はダイエットに効果的?「寝るだけで痩せる」は本当か?

「睡眠不足だと脂肪が燃えにくくなるため太りやすい」

「睡眠時間が長い人ほど痩せているというデータがある」

など、ダイエットにおいて睡眠が重要であると言われることがよくあります。

睡眠時は起きている時よりもエネルギー消費量は低くなるのですが、それでも睡眠時間が長い方がダイエットに良いと言われるのです。

しかし、それは本当でしょうか?

今回は睡眠とダイエットの関係について解説していきます。

はじめにこの記事の内容をまとめると以下の通りです。

  • 睡眠時間は長くても短くてもダイエットに悪影響を及ぼす
  • 睡眠時間が直接的に肥満やダイエットに大きな影響を及ぼすわけではない
  • 睡眠不足は食欲の増進に繋がるのが問題と言われている
  • 慢性的な睡眠不足・睡眠過剰は太る要因になり得るが、睡眠の適正化だけで痩せることは考えにくい

睡眠時間は長くても短くても太りやすい

睡眠不足がダイエットに悪いというのはよく言われていますし、
イメージとしても何となく良くないというものがあると思います。

実際に睡眠時間が少ない人には肥満が多いというデータがありますし、
ホルモンバランスの乱れなど肥満になりやすいメカニズムが色々と指摘されています。

しかし、だからといって睡眠時間が長ければ長いほど良いというわけでもありません。

実は、睡眠時間が長過ぎる場合も肥満になりやすいというデータがあるのです。

以下はアメリカのウィスコンシンの住民を対象にした、
睡眠時間とBMIの関係を示したグラフです。

引用:Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index. – PubMed – NCBI

睡眠時間が7~8時間の場合が最もBMIが低く、
それより長くても短くてもBMIが高くなる傾向にあるのです。

睡眠は“食欲”、“エネルギー代謝”、“日中の活動量”など、
ダイエットに関するあらゆる要素に影響を及ぼすため、かなり複雑な問題です。

そのためまだまだ分かっていないことは多いですし、
人ぞれぞれ、生活スタイルや性格によっても最適な睡眠時間は異なるでしょう。

ただ、睡眠時間は長すぎても短すぎてもダイエットに悪いというのは明らかなので、
このことだけは頭に入れておきましょう。

睡眠時間がカロリー収支に与える影響について

さて、もう少し睡眠とダイエットの関係について詳しく見ていきましょう。

ダイエットにおいて最も重要なのがカロリーの収支です。

体脂肪が減るのは消費カロリーが摂取カロリーよりも多い時で、
体脂肪が増えるのは消費カロリーが摂取カロリーよりも少ないときですからね。

エネルギー保存則がある限り、この法則は絶対です。

では、睡眠時間はカロリー収支にどのような影響をあたえるのでしょうか?

睡眠時間はエネルギー消費量に影響を与えない

睡眠時は省エネ状態なので、
睡眠時間が長いほど活動時間が減って1日の消費カロリーは低くなると考えるのが普通です。

寝ているよりも、漫画を読んだりテレビを見たりして夜更かししている方がカロリーを消費するというわけです。

しかし、睡眠時間が少ないと次のにの日中のカロリー消費量が僅かに少なくなるため、
結果的に睡眠時間の違いで1日の消費カロリーに大きな差が生じないということが分かっています。

早稲田大学の研究において、
睡眠時間が7時間の場合と3.5時間の場合とで1日を通したエネルギー消費量は変わらないとの結果を発表しています。

詳細:睡眠時間の短縮が肥満リスクを増加させるメカニズムを解明 – 早稲田大学

睡眠不足は食欲を感じやすくなり摂取カロリーが多くなる傾向にある

一方、睡眠不足は食欲が増進して摂取カロリーが増える傾向にあると言われています。

先程の早稲田大学の研究でもこのことに言及しており、
3.5時間睡眠の場合は食欲抑制ホルモンPYYの分泌が少なく、主観的な空腹感の増加が見られます。

また、睡眠と食欲の関係性に関する研究は様々な大学で行われており、
代表的なのがスタンフォード大学の実験です。

5時間睡眠の人と8時間睡眠の人を比べた時、
食欲刺激ホルモン“グレリン”は前者の方が14.9%多く、
食欲抑制ホルモン“レプチン”は前者の方が15.5%少ないことが分かりました。

詳細:Stanford study links obesity to hormonal changes from lack of sleep

他にも、睡眠不足の人は高カロリー食品に対する欲求が高まるという研究もあります。

これらの研究より、
睡眠不足の人は自然と食事のカロリーが高くなるため肥満になりやすいのではないかと言われています。

まとめ

一般的に、睡眠時間が長くすぎても短すぎてもダイエットに悪影響を及ぼすというのは間違いありません。

ただ、睡眠不足の人は食欲が増進して肥満になりやすいということでしたが、
ホルモンの分泌量がどれほど食欲に影響するかは分かりませんし、個人差も大きいでしょう。

睡眠とダイエットの関係性は非常に複雑なものなので、
正確なところはまだ判明していません。

少なくとも睡眠は人間の活動のごく一部なので、
睡眠だけでダイエットの成否が決まるということはまずありえません。

慢性的に睡眠不足の場合は太る要因となり得ますが、
それでも結局は脂肪の増減はカロリー収支によって決まるため、直接的にダイエットに大きな影響を与えることはないでしょう。

巷では「睡眠を改善するだけで痩せる」というようなダイエット法も見かけたりしますが、
そんなことはありえません。

ダイエットをするのなら、カロリーの収支を見直すのが第一です。

ダイエットの基本については以下にまとめているので、ぜひこちらもご覧ください。

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著者プロフィール
テク

テク

元ボクサー/ダイエットアドバイザー
試合の度に2週間で6Kgの減量をしていた元ボクサー。 元来の『食べることは好きだけど面倒な運動は嫌い』という性格がたたり、引退後は10Kg以上増量。 正しいダイエットの知識を身に着けた今では、毎日好きなものを食べて体脂肪率10%台前半を維持。 Twitter(@yasetech)ではダイエットに役立つ情報を配信中。
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