「メタボリックシンドローム」というと中年男性の肥満というイメージがあるかと思いますが、ただ脂肪が多いとか、太っているという意味ではありません。
簡単に説明すると、病気のリスクが高い状態、症状が進行しており注意が必要な状況のことを指します。
今回はメタボリックシンドロームについて詳しく解説していきます。
目次
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームは、
健康診断などで複数の検査項目で基準値を上回り複数の異常が重なった状態を指し、
命に関わる疾患、特に「動脈硬化」のリスクが高い状態であることを示します。
検査項目とは以下の4つです。
- 腹囲(ウエスト)⇒内臓脂肪型肥満
- 血清脂質(中性脂肪・善玉コレステロール)⇒脂質異常症
- 血圧⇒高血圧
- 血糖値⇒高血糖
“内臓脂肪症候群”とも言われますが、
その名の通り内臓脂肪量の異常が前提で+αの異常がみられる場合に判定されます。
メタボリックシンドローム自体が病気というわけではなく、
病気の一歩手前の状態です。
「このままの生活を続けると危ない」という指標となるので、
いち早く危険を察知し、予防を促すための概念というわけです。
メタボというと肥満というイメージが強いかと思いますが、
健康に関わることなのです。
メタボリックシンドロームの基準
では具体的にどういう状態がメタボリックシンドロームなのか、
その基準について見ていきましょう。
メタボリックシンドロームと判定されるのは、
「腹囲」に加えて「血清脂質」「血圧」「血糖値」の3つのうち2つ以上が基準値を上回った場合です。
他の数値が高くても腹囲が基準値を超えなければメタボリックシンドロームと判定されません。
そしてそれぞれの基準値は以下の通り。
- 腹囲(ウエスト):「男性85cm以上」「女性90cm以上」
- 血清脂質:「中性脂肪150mg/dL以上」or「HDLコレステロール40mg/dL未満」
- 血圧:「収縮期130mmHg以上」or「拡張期85mmHg以上」
- 血糖値:「空腹時に110mg/dL以上」
腹囲以外は手軽に測定できるものではありませんが、
腹囲はメタボリックシンドロームの前提となっているだけあって最も重要な項目です。
腹囲が細くなれば他の異常も改善へと向かいますからね。
生活習慣病改善のためには腹囲の数値を気にかけるのが重要になります。
メタボリックシンドロームの最も重要な基準は「腹囲」
腹囲は内臓脂肪量にほぼ比例します。
体を大きくする脂肪には“内臓脂肪”と“皮下脂肪”がありますが、
皮下脂肪が全身(特に下半身)に蓄積するのに対し、内臓脂肪はお腹周りにのみ蓄積するからです。
そして内臓脂肪量は生活習慣病と大きな関係があります。
内臓脂肪と生活習慣病の関係
簡単に説明すると内臓脂肪の蓄積は、
中性脂肪の増加・善玉コレステロールの減少をさせたり、血糖値を上げたり、血圧を上昇させたりする原因となるのです。
- 内臓脂肪に蓄積される脂質は中性脂肪⇒中性脂肪値上昇(中性脂肪が増えるとHDLコレステロールは減少する)
- 内臓脂肪が増えるとインスリン抵抗性低下する(血糖値を下げる能力の低下)⇒血糖値上昇
- 内臓脂肪が増えると血圧を抑制する物質の分泌が減り、逆に血圧を上昇させる物質が増える⇒血圧上昇
メタボリックシンドロームの判定は内臓脂肪(腹囲)と血清脂質、血糖値、血圧、
これらが並列に見られがちですが実際は違います。
内臓脂肪によって血清脂質、血糖値、血圧などの異常が引き起こされるのです。
内臓脂肪の蓄積により、
以下のように症状が進行していきます。
- STEP1:内臓脂肪の蓄積(腹囲)
- STEP2(メタボリックシンドローム):脂質異常症、高血糖、血圧上昇
- STEP3:動脈硬化
- STEP4:心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気
メタボリックシンドロームとはSTEP2の状態のことなのです。
このように内臓脂肪型の肥満は生活習慣病に大きく関係しますが、
これに対し皮下脂肪型の肥満は病気のリスクはあまりありません。
体脂肪率ではなく腹囲がメタボリックシンドロームの基準となっているのはこのためです。
なぜ男性はメタボリックシンドロームになりやすいのか?
メタボというと中年男性のイメージがあると思いますが、
実際に男性の方がメタボリックシンドロームになる可能性は何倍も高くなります。
年齢とともに運動量、代謝が経るため脂肪が増えるというのは男女ともに変わらないのですが、
男性の方が女性よりも内臓脂肪がつきやすいのです。
通常、内臓の近くの方がエネルギーが取り出しやすく蓄えやすいため、
皮下脂肪よりも内臓脂肪のほうが落としやすく付きやすいという性質があります。
しかし、女性の場合は外部から衝撃を守るため、
女性ホルモンの影響のため、内臓脂肪よりも皮下脂肪のほうがつきやすいのです。
実際、同じくらいの肥満度でも、
ウエストのサイズは女性よりも男性の方が太くなります。
こちらに日本人の男女別・年齢別のウエストの平均サイズをまとめました。
男性の場合、40歳を超えるとウエストの平均が85cmを超えるので、
腹囲が基準値を超えるのは珍しくありません。
中年男性は約半分がメタボリックシンドロームとも言われていますからね。
一方女性の場合、平均サイズが男性よりも10cm前後細くなるのが分かるかと思います。
これに加え、女性のメタボの判定はウエスト90cmと男性よりも5cm太いので、
一層女性はメタボと判定されにくいのです。
ちなみに皮下脂肪と内臓脂肪の違いについてはこちらに詳しくまとめています。
メタボリックシンドロームの改善
メタボリックシンドロームの大本の原因は内臓脂肪であり、
内臓脂肪の蓄積により他の症状が進行した場合が大半です。
なので、メタボリックシンドロームを改善するためには、
内臓脂肪の減少(腹囲を細くする)が重要になります。
内臓脂肪を減らせば大抵は自然と血清脂質・血糖値・血圧は正常化されますからね。
では内臓脂肪を減らすにはどうすれば良いのか。
内臓脂肪を減らす方法
内臓脂肪と言っても特別なことはありません。
カロリーの過剰摂取によって体に蓄えられた脂肪なので、
「消費カロリー>摂取カロリー」によってその蓄えられたカロリーを使っていくことで減らせます。
つまり、通常のダイエットと何ら変わりません。
食事のカロリーを減らしたり、運動によるカロリーを増やしたりします。
ただ、体に何万Kcal、何十万Kcalという膨大なエネルギーが脂肪として蓄えられているので、
それを消費するのには一朝一夕では済みません。
何ヶ月という期間をかけて地道にカロリーコントロールを続けていく必要があり、
そのためには頑張りすぎず小さなことを積み上げていくのが重要になります。
ダイエットと考えるよりもちょっとした生活習慣の改善と考えましょう。
おすすめの方法は以下の通り。
■食事制限で摂取カロリーを減らす
- 間食、食後のデザートをなくす
- 食事の最初に野菜をたくさん摂る
- 毎食の主食の量を少しずつ減らす
■運動で消費カロリーを増やす
- 階段を積極的に使う
- 通勤や買い物など移動手段に徒歩、または自転車を使う
- 毎日短い時間でも「この時間は運動をする」という習慣をつける
努力が必要なことは継続が難しいので、
ポイントは“頑張るほどではないけど少し手間という程度のことを積み重ねること”です。
小さなことでも長期間継続すれば確実に内臓脂肪は減っていくので、
じっくり気長に取り組んでいきましょう。
あとがき
以上、メタボリックシンドロームの基準や改善方法についてでした。
メタボを放置して生活習慣病が進行し、
動脈硬化を経て重大な病気を患うというケースは珍しくありません。
体重や体脂肪率だけでなく、
ウエストを定期的に計測して日頃から意識しておくのが重要になります。
特に生活習慣病、動脈硬化というのは自覚症状が殆ど無いので、
健康診断をしないと重大な病気を患うまで気付きにくいというのが厄介な点です。
ちなみに真っ当なダイエットの方法についてこちらにまとめているので、
内臓脂肪の減少にも役立ててもらえると思います。