ダイエットにおいて、「基礎代謝を上げるのが重要」とよく言われます。
基礎代謝は1日の消費カロリーを左右するため、これが向上すれば自然と痩せる体質になり、リバウンドしにくいのだとか。
具体的には筋肉をつけたり、体温を向上させたりすることで基礎代謝が上がると言われます。
実はこれは間違いです。
ダイエットにおいて「基礎代謝を上げる」という方法は例外なく効果がないことが分かっています。
今回はこの理由を解説します。
目次
基礎代謝とは?
まず本題に入る前に基礎代謝の概要について説明します。
基礎代謝とは、1日の消費カロリーのうちの約7割を占めるものです。
これらの中身を見てみると以下の通り。
- 基礎代謝:生きる上で最低限必要となるエネルギー。体の器官などを正常に機能させるのに使われる。
- 生活活動代謝:日常生活を送る上での活動に要するエネルギー。運動や、移動、立ったり座ったりする時に消費する。
- 食事誘導性熱代謝(DIT):食事をする際に発生する熱によるエネルギー。食事の消化・吸収などで内蔵が活性化するためのもの。
運動で消費するカロリーよりも基礎代謝の方が多いので、
運動よりも基礎代謝を上げるのがダイエットにおいて効果的とまで言われることもあります。
一般的に言われている「基礎代謝を上げる方法」
では次に、基礎代謝を上げる方法としてはどんな方法があるのか具体的に見ていきましょう。
1,筋肉量を増やす
基礎代謝を上げる方法として最も一般的なのが「筋トレで筋肉をつける」ということです。
筋肉は維持するのにエネルギーが必要なので、
筋肉が増えれば消費されるエネルギーも増えます。
脂肪よりも燃費が悪いということです。
そのためウォーキングなどの負荷が小さい有酸素運動よりも、
筋肉負荷の大きい無酸素運動(筋トレ)がダイエットに効果的と言われる傾向にあるのです。
2,肺活量を増やす
肺活量が増えると基礎代謝が増えるというのは、
以下のメカニズムによるものです。
肺活量が増える⇒心肺機能向上⇒血流、酸素運搬が活発⇒体内の器官が活性化⇒基礎代謝アップ
具体的には、以下の行動が挙げられます。
- 有酸素運動
- 姿勢を正す
- 深呼吸
3,体温を上げる
体温が上昇すると皮膚の放熱量が多くなり、
その分エネルギーを消費します。
体温が1°上げるだけで10%以上も代謝が上がると言われています。
具体的な方法としては以下の通り。
- 半身浴などで体を温める
- 飲食で内側から体を温める
「基礎代謝を上げる」という言葉の罠
さて、ここからが本題です。
今ではダイエットで当たり前に使われている、
「基礎代謝を上げて太りにくい体質にする」という言葉ですが、
これは鵜呑みにしてはいけません。
確かに基礎代謝が上がれば『摂取カロリー<消費カロリー』にしやすく、
太りにくく痩せやすい体質になるのは間違いないでしょう。
しかし実は、人間の基礎代謝は簡単に上がるようなものではないのです。
むしろ、ダイエットをすると基礎代謝は下がります。
「筋肉をつけて基礎代謝UP」の嘘
最も一般的な「筋肉を付けて基礎代謝をUPする」ということについて。
筋肉が担っている基礎代謝は20%しかなく、
筋肉を1Kg増やしたところで、約15Kcalしか基礎代謝は増えません。
そして何より、筋肉をダイエット中に増やすのは困難なのです。
「筋トレをしたら脂肪が筋肉に変わる」
と思っている人は多いのではないでしょうか?
これは間違いです。
現在体についている脂肪が変化して筋肉が増えるのではなく、
摂取する食べ物によって筋肉は増えるのです。
そして筋肉を増やすには消費カロリー以上のカロリーを摂取する必要があり、
その際に脂肪も一緒に増えます。
つまり、筋肉を増やしながら脂肪を減らすのは非現実的なのです。
脂肪を減らす過程でも筋肉は減りますしね。
ただし、筋トレ自体はダイエットにおいて重要な意味があります。
カロリー収支がマイナスの状態では脂肪だけでなく筋肉も分解されるのですが、
筋トレをすることで筋肉の減少量を最低限に留めることができるのです。
筋肉の分解が抑えられることで、脂肪分解によってカロリー不足が補われるので、
結果的に体脂肪率を効率的に落とせるということです。
このことは以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「肺活量を増やして基礎代謝UP」の嘘
続いて、肺活量を増やして基礎代謝UPについて。
筋肉に関しては多少なりとも基礎代謝を担っているのは事実なので、
完全に的外れというわけではありません。
しかし、この肺活量に関しては、
全くの見当違いと言ってもいいでしょう。
そもそも肺活量によって基礎代謝が上がるというソースもありませんし、
どれくらい上がるのかというのも見たことがありません。
肺活量が基礎代謝を左右するほど内蔵の活動に影響を与えるなんて、
絶対にありえないというのは想像しただけで分かるかと思います。
「体温を上げて基礎代謝UP」の嘘
体温が高い人は基礎代謝が高いというのは事実ですが、
だからといって体を温めたら基礎代謝が上がるというわけではありません。
そもそも一時的に体を温めるのではなく、
基礎体温を上げないと意味ないのですが、“簡単に基礎体温を上げる方法なんてない”ですしね。
体を外部から温めれば代謝が上がると思っている人も多いですが、
むしろ外部との温度差があるほど基礎体温を保つためにエネルギーは使います。
意外かもしれませんが、
夏よりも冬のほうが代謝は高くなるのです。
たとえばサウナの中に氷を持って入ったとしても、
サウナ内の温度が変わることはありません。
氷の量によっては一時的に温度が下がったとしても、
氷が溶ければ元の温度に戻ります。
体を温めて体温を上げるというのは、
サウナの温度を氷で下げるということくらい的はずれなことだったのです。
“基礎代謝”ではなく“習慣”を改善する
この他にもダイエットにおいて「基礎代謝を上げる方法」はいくつも提唱されていますが、
どれもインチキであることは断言できます。
なぜなら、基礎代謝は体を構成する組織(脂肪や筋肉など)の重量でほぼ決まるからです。
要は基礎代謝は体の大きさに比例するので、
これを向上させるにはたくさん食事を取り体を大きくするしかありません。
つまり基礎代謝を上げるには、
ダイエットとは真逆のことをしないといけないということです。
以上のことから、
「基礎代謝を上げる方法」は例外なく当てになりません。
しかし“基礎代謝”はダイエットの知識があまりない人を騙しやすい言葉なので、
インチキなダイエットにはよく使われるのです。
そもそも基礎代謝を上げる目的は、
『摂取カロリー<消費カロリー』
これを実現するためです。
基礎代謝を上げるのが難しいと分かったので、
これに代わるものとして“習慣を改善すること”を提案します。
例えばスナック菓子や食後のデザートなど間食の習慣がある場合、
簡単に“300kcal”程にに達してしまいます。
これをやめるだけで理論上1ヶ月で”1.25kg”のダイエット効果になるのです。
1日の基礎代謝を300kcal上げるのは無理がありますが、
1日の摂取カロリーを300Kcal抑えるのはこの習慣をなくすだけでいいのです。
他にも“ジョギングの習慣”、“食事を減らす習慣”など、
これらを身に付けるのは、基礎代謝の向上よりも遥かに現実的で、リバウンドの心配もありません。
あとがき
以上、基礎代謝を上げるダイエットがいかに信用ならないかについて説明しました。
“基礎代謝”という言葉が使われると、
何となく信用してしまう気持ちもわかります。
しかし、騙す側にとって“基礎代謝”という言葉ほど便利なものはありません。
ダイエットに詳しくない人がダイエットのサイトを運営していることがありますが、
そういう人ほど自分では説明できないことを“基礎代謝の効果”と言う風潮にあります。
そういう悪質なサイトにだまされないように、
“基礎代謝”という言葉が出てきたら一度疑うようにしましょう。
ちなみに、今回ダイエットにおける習慣化の重要性について述べましたが、
このことに関して以下の記事もぜひ参考にして下さい。