『バターコーヒーダイエット』とはアメリカ発祥のダイエット法で日本でも度々話題に上がります。
コーヒーにバターとココナッツオイルを加えて作る“バターコーヒー”を利用したダイエット法です。『完全無欠コーヒー』や『防弾コーヒー』とも言われます。
「お手軽に実践でき、短期間で痩せる」と言われるこのダイエットですが、本当に痩せるのでしょうか?
はじめに結論を言うと、ただただ健康に悪く非効率なダイエット法なので絶対にやめましょう!
栄養学やダイエットについてきちんと知識がある人は、このダイエットの方法を聞いた段階で分かると思います。まともなダイエット法ではありません。
飽和脂肪酸が多いバターやココナッツオイルが健康に悪いというのは明らかですからね。
今回はこのバターコーヒーダイエットがNGなのか詳しく解説していきます。
目次
バターコーヒーダイエットとは?
まずはバターコーヒーダイエットがどんなダイエット法なのか解説していきます。
「すでに知っている」「なぜバターコーヒーがNGなのか早く知りたい」という人は『バターコーヒーのダイエット効果について』まで飛ばして下さい。
バターコーヒーダイエットの方法
バターコーヒーダイエットの方法は至ってシンプル。
朝食の代わりにバターコーヒーを1、2杯飲む
これだけです。
- グラスフェッドバター:10g
- ココナッツオイル(MTCオイル):大さじ1(12g)
これらをブラックコーヒー1杯(100ml程度)に加える。
ちなみにグラスフェッドバターとは牧草だけで育てられた乳牛由来のバター。日本ではあまり手に入らないので、通販で手に入れるのが一般的。
バターコーヒーダイエットで痩せると言われる理由
バターコーヒーを朝食に飲むだけで痩せると言われるのは、
主に以下の6つの理由が挙げられます。
- 朝食の置き換えによるカロリーダウン
- バターコーヒーによる食欲の抑制
- グラスフェッドバターには不飽和脂肪酸が多い
- カフェイン効果で代謝アップ
- コーヒーのクロロゲン酸が脂肪分解を促進
- ココナッツオイルの中鎖脂肪酸がダイエットに効果的
これだけ並び立てられると「よくわからないけど凄そう!」と思うのも無理はありません。
しかし実際は1の『カロリーダウン』くらいしかまともな根拠はなく、
他はどれもダイエット効果と言うにはあまりにもいい加減です。
置き換えダイエットをするにしてももっと良い食品はいくらでもありますし、
むしろ健康への悪影響のほうが心配です。
ではバターコーヒーダイエットが何故NGなのか詳しく解説していきます。
バターコーヒーのダイエット効果について
バターコーヒーダイエットは痩せる根拠が乏しいだけでなく、
健康に悪いダイエット法です。
健康にどんな影響が起こりうるのかは後述するとして、
この項目ではダイエット効果に絞って解説していきます。
正直、ツッコミどころがたくさんあるので何から指摘すれば良いのか悩ましいですが、
順番に問題点を挙げていきましょう。
- グラスフェッドバターにダイエット効果はない
- ココナッツオイルにダイエット効果はない
- コーヒーにダイエット効果はない
- カロリーが減らなければ痩せない
【問題点1】グラスフェッドバターにダイエット効果はない
「グラスフェッドバターは通常のバターと比べて『不飽和脂肪酸』が多いため、健康にもダイエットにも良い」
このように言われているのですが、
この一文だけでもいろいろと指摘すべきポイントがあります。
- グラスフェッドバターに不飽和脂肪酸が多いという根拠はない
- 不飽和脂肪酸自体カロリーのもとになるので太る原因となる
- 不飽和脂肪酸が重要ならバターではなくオリーブオイルなどの植物油を使うべき
動物由来の固形脂はどれも不飽和脂肪酸が少なく飽和脂肪酸が多いという性質があります。
特にバターは顕著で、脂質の60%以上が飽和脂肪酸です。
バターコーヒーダイエットを提唱するサイトはまるでコピペのように
「グラスフェッドバターは不飽和脂肪酸が多い」
と書かれているのですが、その根拠や数値は一切見当たりません。
また、不飽和脂肪酸はコレステロールや中性脂肪を減らす効果があるので、
健康に良いのは間違いありません。
青魚のDHAやEPA、オリーブオイルなどが体に良いとされるのはこのためです。
しかし不飽和脂肪酸を摂ったからといって体脂肪が減るわけではありませんし、
むしろ高カロリーであるため太りやすいとも言えます。
いずれにしてもわざわざ日本で手に入りにくいグラスフェッドバターを用いる意味は皆無でしょう。
【問題点2】ココナッツオイルにダイエット効果はない
『ココナッツオイルダイエット』なるものもありますし、
ココナッツオイルはダイエットに良いと思われている節があります。
何でもココナッツオイルは“中鎖脂肪酸”が100%であり太りにくいのだとか。
中鎖脂肪酸とは“飽和・不飽和”とは異なる脂肪酸の分類の仕方で、
“長鎖脂肪酸”と比べて「エネルギーとして使われやすく体脂肪として蓄積しにくい」という性質があります。
しかし実際は中鎖脂肪酸、ひいてはココナッツオイルがダイエットに効果的というわけではありません。
エネルギーとして使われやすいと言っても、
消費カロリーは増えませんからね。
このあたりは誤解しやすいので要注意。
ココナッツオイルが優先的にエネルギーとして使われれば、
後回しにされるカロリー成分もあるということです。
要はココナッツオイルを摂ったとしても摂取カロリーが増えるだけなので、
結局はカロリーに相当する分だけ脂肪になります。
似たような例として、『アルコール』が挙げられます。
アルコールは「自身が体脂肪に変換されることはなく、すぐにエネルギーとして使われる」という性質があります。
そのため、お酒は“エンプティカロリー”と言われ、どれだけ飲んでも太らないと主張する人がいるのです。
しかしアルコールのカロリーがエネルギーとして使われれば、本来使われるはずだった三大栄養素のカロリーが脂肪として蓄積されます。
結局どんな栄養素であれ、摂取したカロリー分だけ脂肪に変わるのです。
ちなみにココナッツオイルは“80%”以上が飽和脂肪酸です。
飽和・不飽和に関わらず太るというのは間違いないのですが、
前項の「グラスフェッドバターは不飽和だからダイエットに効果的」というのに矛盾しますね。
これだけでも、いかにバターコーヒーダイエットがガバガバな理論なのかが分かるかと思います。
【問題点3】コーヒーにダイエット効果はない
コーヒーはカロリー自体ほぼ0ですし、
バターやココナッツオイルなどとは違い太ることは考えにくいです。
それどころかコーヒーに含まれる“カフェイン”や“クロロゲン酸”がダイエットに効果的と言われたりもします。
しかし実際はダイエット効果の根拠は乏しく、
コーヒーを飲んだだけで痩せることはまずありえません。
これらは脂肪がエネルギーとして使われやすくする効果があると言われているのですが、
消費カロリー自体が増えるわけではないのです。
結局カロリー収支がプラスの状態だと脂肪が燃焼されるよりも“蓄積される方”が優位に働きます。
コーヒーを飲めば痩せるというきちんとした実験データもないですしね。
このように「理論的にはダイエット効果があるかもしれない」と言われる食品は、
コーヒーに限らず無数にあります。
しかし結局はカロリーの収支以上にダイエットに影響を及ぼす効果が認められたことはないのです。
【問題点4】カロリーが減らなければ痩せない
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、
バターコーヒーダイエットが痩せる理由は「朝食のカロリーが削減されるから」というただ一点です。
バターやココナッツオイル、コーヒーにダイエット効果はないので、
置き換えダイエットとしての効果しか見込めません。
そもそも人間の脂肪の増減はいかなる時もカロリー収支によって左右されます。
人体にもエネルギー保存則は当てはまるので、
摂取カロリーが消費カロリーを下回らなければ脂肪が減ることはないのです。
つまりバターコーヒーの置き換えでカロリーを抑えることができなければ痩せないということです。
ここでバターコーヒーのカロリーを見てみましょう。
- ブラックコーヒー100ml:4Kcal
- グラスフェッドバター10g:75Kcal
- ココナッツオイル12g:108Kcal
⇒187Kcal
バターコーヒーは1杯で200Kcal弱。
これはコンビニおにぎり1個分にも相当します。
つまり普段朝食をおにぎり1個や果物1個などで200Kcal程度に抑えている人は、
バターコーヒーで置き換えたところで痩せられないのです。
そういう人が2杯飲んでしまうとカロリーオーバーになるので逆に太ります。
そもそも、栄養が乏しく無駄に高カロリーなバターコーヒーで置き換えダイエットをすることに何のメリットもありません。
置き換えダイエットは低カロリー・高栄養(たんぱく質・ビタミン・ミネラルが豊富)の食品で行うのがセオリーです。
さて、ここまでバターコーヒーのダイエット効果がいかに信憑性の乏しいものであるか説明してきました。
続いて、バターコーヒーダイエットの健康への影響について解説していきます。
バターコーヒーダイエットは健康に悪い
バターコーヒーダイエットがなぜ健康に悪いのかというと2つ理由が挙げられます。
- 飽和脂肪酸が多い
- 重要な栄養素が摂取できない
【不健康な理由1】飽和脂肪酸が多い
前述しましたが、
グラスフェッドバターもココナッツオイルも飽和脂肪酸が豊富に含まれます。
それぞれの脂質の飽和脂肪酸の占める割合は63%、84%です。
一般的に脂質は体に良いものと悪いものに分類されることが多いですが、
これらの分類は主に「飽和・不飽和」の違いによるものです。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は何が違うのか、
簡単に表にまとめました。
脂肪酸の種類 | 効果 | 製品名 |
---|---|---|
飽和脂肪酸 | 主にエネルギーとして使われるが、コレステロールを増加させる作用がある | バター、ラード、牛脂など常温で固形の脂 |
一価不飽和脂肪酸(オレイン酸) | 総コレステロールを減らすが、HDL(善玉)コレステロールは減らさない | オリーブオイル、アーモンド、ナッツ |
多価不飽和脂肪酸(n-6系:リノール酸、アラキドン酸) | 総コレステロールを減らし、HDLコレステロールも減らす | ごま油、大豆油 |
多価不飽和脂肪酸(n-3系:α-リノレン酸、EPA、DHA) | 中性脂肪を減らし、それに伴いHDLコレステロールを増やし、LDL(悪玉)コレステロールを減らす | 青魚、しそ油、なたね油 |
つまりこういうことです。
- 飽和脂肪酸:コレステロールを増やす
- 不飽和脂肪酸:コレステロールを減らす
コレステロールは動脈硬化の原因となり、
さらにあらゆる症状を引き起こします。
心肥大、心不全、高血圧、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、腎硬化症、閉塞性動脈硬化症、脳出血、クモ膜下出血…etc
健康を気遣う人が気をつけるべき代表的な成分なのです。
【不健康な理由2】重要な栄養素が摂取できない
置き換えダイエットは本来低カロリー・高栄養の食品を用いることで、
健康的に痩せることを目的としたダイエット法です。
たとえばプロテインで食事を置き換えると、
カロリーを減らしつつ、さらに重要な栄養素“たんぱく質”を多く摂取することができます。
炭水化物や脂質を減らせるのも健康のために重要です。
一方バターコーヒーダイエットの場合、
カロリーを減らせても重要なたんぱく質は摂取できませんし、
健康に悪い脂質を多く摂取してしまうことになります。
それだけではありません。
本来の食事で摂取できるはずであった“ビタミン”や“ミネラル”、“食物繊維”も不足します。
前述しましたが、バターコーヒーは栄養面において何一つ良いところがないので、
置き換えダイエットで用いるメリットがありません。
これなら不健康な脂質を摂らない分、朝食を抜いた方がまだ健康的です。
あとがき
以上、バターコーヒーダイエットについて詳しく解説していきました。
ネットではこのダイエット法を推奨しているサイトはたくさんありますが、
栄養学に関してちゃんとした知識がある人であれば絶対に勧めることはないでしょう。
バターコーヒーダイエットに限った話ではなく、
ダイエットは商業的に利用されやすいのでいい加減な情報が広まることが多々あります。
そのような情報に騙されないようにするためには、
まずダイエットの基本的な知識を抑えて正しい手順で取り組むのが重要です。
ダイエットの基本手順についてまとめているので、
本気で痩せたいと思っている人は是非こちらもご覧ください。