一見痩せて見える男性でも、お腹は二段腹、三段腹になっていたり、下腹だけ極端に脂肪がついてポッコリとしているということはよくあります。
「隠れ肥満」と言われたりしますが、このような人は女性よりも男性の方が遥かに多く、年齢を重ねるに連れてお腹の脂肪に悩む人の割合は増えてきます。
実は、「お腹だけ極端に太る」「ダイエットをしてもお腹の肉が中々落ちない」というのは、特別な体質なんかではなく、男性にとってはごくごく普通のことなんです。
そういう人は大抵、上体起こし(腹筋運動)や腹筋ローラーなどで腹筋の筋肉をつけようとしたり、体幹中心の運動をしようとしますが、実はこれらにウエストを細くする効果はありません。
心当たりがある人も多いのではないでしょうか。
今回は男性のお腹に脂肪がつきやすく落ちにくい理由に加え、お腹の脂肪を落とす正しい方法をご紹介します。
目次
男性のお腹に脂肪が付きやすい理由
「男性は女性よりもお腹の脂肪が多い」
というのは、実際の統計データを見ても明らかです。
男性と女性のウエストサイズの違い
以下、日本人の男性と女性の年齢別の平均ウエストサイズです。
年齢 | 男性(cm) | 女性(cm) |
---|---|---|
20~24 | 72.9 | 67 |
25~29 | 77.9 | 67.6 |
30~34 | 81.5 | 68.1 |
35~39 | 83.5 | 69.3 |
40~44 | 85.4 | 71.1 |
45~49 | 85.5 | 71.6 |
50~54 | 86.2 | 73.5 |
55~59 | 86 | 74.9 |
60~64 | 84.3 | 75.5 |
65~69 | 85.6 | 78 |
70~74 | 85.9 | 79.4 |
75~79 | 84.8 | 80.5 |
参照:size-JPN 2004-2006 調査結果について(METI/経済産業省)
男性は女性よりも体脂肪率は10%ほど低いのですが、
それでもウエストは明らかに男性の方が太いのが見て取れます。
なぜこのような特徴が見られるのかというと、
男性と女性とでは脂肪の付き方が違うからです。
男性はお腹周りの脂肪(内臓脂肪)が付きやすく、
女性の場合はお尻や太もも、二の腕などの脂肪(皮下脂肪)が付きやすいのです。
男性は内臓脂肪、女性は皮下脂肪がつきやすい
脂肪は『内臓脂肪』と『皮下脂肪』の2種類に分類することができます。
お腹の内臓周りに付く脂肪である内臓脂肪に対し、
全身の皮膚のすぐ下に付く脂肪が皮下脂肪です。
- 見た目に現れにくい
- 生活習慣病の原因となるため、健康診断でメタボリックシンドロームの基準として利用される(腹囲)
- 男性の方が女性よりも増えやすい
- エネルギーとして蓄積しやすく使われやすい
内臓脂肪と皮下脂肪とではつく場所だけではなく、
特徴が全く異なります。
病気のリスクにはほとんどならない皮下脂肪に対し、
内臓脂肪は生活習慣病の原因となりやすいので要注意です。
男女のそれぞれの付き方の違いについては、
以前、女性と男性の体脂肪率ごとの体型の違いについて画像とともに解説しましたが、
こちらを見比べるとこれは一目瞭然だと思います。
男女の脂肪の付き方の違いは分泌されるホルモンによる影響とされており、
そのため閉経後の女性は内臓脂肪が増えやすくなり、ウエストも太くなりやすいという特徴があるのです。
そして、内臓脂肪は内臓の近くにあるので、
エネルギーとして取り出されやすいため、落ちやすいという性質もあります。
ただ、これは皮下脂肪と比べて落ちやすいということであり、
1Kgあたり7200Kcalに相当するというのは内臓脂肪も皮下脂肪も変わりません。
お腹を細くするのに重要なポイント
では、お腹のお肉はどうやったら効果的に落ちるのか説明していきます。
方法自体はいくらでもあるので自分に合ったものを探す必要がありますが、
絶対に抑えておかないといけないポイントがあります。
お腹を細くするには調べたら色々な方法が見つかるとは思いますが、
本当に効果があるものは限られていますからね。
ポイントは以下の5つ。
- 脂肪を落とすのが第一
- お腹の脂肪だけ集中的に落とすのは医学的に不可能
- 脂肪の増減はカロリーの収支が全て
- 体重ではなく体脂肪率を目安にする
- すぐに効果が表れる方法はない
ポイント1.脂肪を落とすのが第一
どんな方法で行うにしても、お腹の脂肪が落ちない限りお腹を十分細くすることはできません。
多くの人は「腹筋を鍛えればお腹が引き締まって細くなる」と思いがちですが、
それは大きな間違いです。
どんなに上体起こしや腹筋ローラーなどで腹直筋、腹斜筋を鍛えたとしても、
これらには内側を締め付ける効果はあまりないため、お腹を細くすることはできません。
ただ、腹筋の中でも最深部に“腹横筋”というコルセット状に横に繊維が走っているインナーマッスルがあります。
これには内側の内臓脂肪を締め付ける効果があるので、
内臓脂肪を落とさなくても少しはウエストを細くする効果が見込めるでしょう。
通常の腹筋の筋トレとは違い、
“ドローイン”というお腹を凹ませて負荷をかけるトレーニングで鍛えることができます。
しかし、それでも内臓脂肪が多ければあまり意味をなしません。
結局は内臓脂肪を落とさないと目に見えて細くするということはできないのです。
少なくとも、現在お腹に力を入れた時に凹む状態以上にウエストは細くなりません。
ポイント2.お腹の脂肪を集中的に落とすことは医学的に不可能
お腹の脂肪を落とすことを考えると、
お腹を動かしたり、お腹に負荷がかかる運動をしがちですが、これも間違いです。
運動で使った部位の脂肪が優先的に落ちるというわけではなく、
脂肪が落ちる際は全身の脂肪が関係します。
脂肪を分解するホルモンや酵素は血液で全身を循環しているわけですからね。
どんなダイエット法であれ、
皮下脂肪に比べると内臓脂肪が落ちやすいということはあるのですが、
ダイエットの仕方で脂肪の落ち方が違うということはありません。
下半身中心の運動をしても上半身も等しく脂肪は落ちますし、
逆も同様です。
そして、お腹に負荷をかける運動というのは、
全身運動と比べて小さな運動になるため、消費カロリーは小さくなり、効率が悪いのです。
結局、お腹の脂肪を落とそうとすると、
全身の脂肪をまんべんなく落としていくことに繋がるので、
普通のダイエットとあまり変わりません。
このことは多くの人が誤解しているので、ぜひこれを機にしっかり覚えておきましょう。
ポイント3.脂肪の増減はカロリーの収支が全て
そして、脂肪を落とす上で一番に考えないといけないのが、
摂取カロリーと消費カロリーの収支です。
ダイエットにおいて『代謝』や『血糖値』など、
カロリーとは別の概念が出てくることがありますが、
結局は脂肪の増減はカロリーの収支によって決まることが分かっています。
ダイエットに関わるほど簡単に代謝を上げる方法なんてこの世に存在しませんし、
血糖値が上がっても上がらなくてもカロリーの収支によって脂肪の増減は決まります。
食事を減らすにしても、運動をするにしても、
消費カロリーが多ければその分脂肪がエネルギーとして使われ、
摂取カロリーが多ければ余ったエネルギーが脂肪と蓄えられるというだけです。
体質によって食事制限、または運動で痩せにくいということもありえませんし、
ダイエットの仕方で脂肪の落ち方が変わってくるということもありません。
このあたりはネット法には嘘の情報がたくさんあるので注意しましょう。
「〇〇をすればお腹の脂肪が落ちやすい」
「〇〇をすれば皮下脂肪よりも内臓脂肪の方が落ちるようになる」
「〇〇をしなければ痩せない」
これらの情報は鵜呑みにせず、
カロリーの収支を一番に考えるようにして下さい。
自分に向いているダイエットというのは、
体質によって決まるのではなく、「自分が楽にカロリー収支をマイナスの状態に保てるもの」を指します。
ポイント4.体重ではなく体脂肪率を目安にする
普通のダイエットとなると体重の変化やBMIなどを気にしてしまいがちですが、
重要なのは体脂肪率です。
BMIが低くても脂肪が多かったりすることがありますし、
体重が減ってもお腹の脂肪が落ちていないということはよくあります。
- BMIの概要:簡単に計算できる肥満度の指標
- BMIの計算:体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)
- BMIの指標
- 18.5未満:痩せ型
- 18.5~25:普通体重
- 25以上:肥満
- BMIの長所:特別な器具や複雑な計算は不要で簡単に求めることができる
- BMIの短所:脂肪以外の要因(筋肉や水分等)でもBMIは増減するので、肥満度としての信憑性はあまり高くはない
しかし、体脂肪率の場合は数値が減れば確実に内臓脂肪は減っていっていますし、
同じ体脂肪率なら人によって体型が大きく異なるということもありません。
例外としてヒョロヒョロな人とマッチョな人が同じ体脂肪率になることもありますが、
極端に筋肉が多い、または少ないということでもない限り、こういった差は生じません。
男性の場合、お腹の脂肪に悩んでいる人は体脂肪率25%以上の人が大半です。
体脂肪率30%にもなると、胸が段になりお腹以外でも明確に肥満と言える状態になりますが、
体脂肪率25%前後だと他の部位は標準的に見えてもお腹が特に突き出ている状態となることが多いです。
体脂肪率20%前後で多少お腹のたるみはあるものの、出っ張りはほとんどない状態になります。
体重が落ちてもお腹の肉が落ちないという人は、
体脂肪率がまだまだ高い状態です。
平均的な体脂肪率というのも20%くらいなので、
お腹を細くしたいという人はまずは体脂肪率20%という数字を目指しましょう。
ポイント5.すぐに効果が表れる方法はない
ダイエットとなると即効性などを求める人は多いと思いますし、
世の中には「1週間で5Kg痩せた!」なんてインパクトのあるダイエットの情報に溢れています。
しかし、脂肪吸引などの医学的な処置でもしない限り、
脂肪を短期間で落とす方法なんてありません。
体脂肪は1Kgで7200Kcalに相当するため、
トップアスリートの運動量をもってしても1週間で数Kg落とすのは不可能。
世の中に溢れている短期間ダイエットは、
例外なく、脂肪を落とすものではなく、体内の水分量を減らすものです。
普通の生活をしていても体内の水分は1日の内にKg単位で変化するため、
食事のとり方をかえるだけで簡単に体重は落ちます。
当然、内臓脂肪は大して落ちていないので、
お腹は対して細くなりません。
参考までに、
以下のグラフは「1ヶ月で1Kgの脂肪を落とす」という真っ当なダイエットをしている際の水分と体脂肪の変化です。
体重は水分でごまかせるので落とすのは簡単ですが、
体脂肪を落とすのは簡単ではありません。
「すぐに痩せる」というようなダイエットの文言には惑わされず、
地道に続けていくしか無いのです。
お腹を細くするダイエット法
さて、お腹を細くする具体的な方法について説明していきますが、
ここまでの内容をきちんと理解できていれば何をすべきか分かると思います。
カロリーの収支がマイナスにできる方法なら何でも構いません。
- 食事回数を増やす
- 食事回数を減らす
- 特定の食品を積極的に食べる
- 糖質を摂らないようにする
- 間食をなくす
- アルコールの量や頻度を控える
- ランニングを毎日する
- 階段を使うようにする
- バスや電車では常に立っている
世の中には色んなダイエット法がありますが、
『摂取カロリー<消費カロリー』の状態を保てればカロリーの収支に応じて体脂肪は減っていきます。
しかし、具体的に何をすべきなのか分からない人も多いでしょう。
人が成功した方法を真似たとしても、
それが自分に合っているかどうかわかりません。
運動が好きな人もいれば嫌いな人もいますし、
食事の楽しみを何よりも大事にする人もいれば最低限の栄養補給程度にしか考えていない人もいますからね。
そこで以下の2点を基準に、自分に合った方法を考えてみましょう。
- カロリーの収支を確実にマイナスにできること
- 痩せたあとでもずっと続けられること
前者については今まで述べてきましたが、
世間では根拠がないダイエット法がたくさんあるので、それに惑わされないようにするということです。
そして、ダイエットは痩せて終わりではなく、
「痩せた後も体型を維持するために続けていかないといけない」ということも一緒に頭に入れておきましょう。
ダイエットを辞めて元の生活に戻すと、体型も元に戻るようになっているのです。
詳細:ダイエットで徐々に痩せなくなる原因&食事制限や運動を辞めると体重が元に戻る理由
なので、あらかじめずっと続けられることを見つけてそれを習慣化する必要があるということです。
食事の量を大きく減らす、長時間運動する、
などをずっと続けられれば自然とスリムな状態を維持できるでしょう。
しかし、実際にそれを続けられる人は限られるほどしかいません。
ダイエットとなると一つの方法で痩せようとしがちですが、
そうではなく小さな習慣を積み重ねるほうが遥かに楽です。
自分の生活を振り返ってみて、改善できるところがないか考えてみましょう。
- 自分の1週間の生活を振り返る
- 食事や間食、デザート、お酒、飲み物でカロリーを削れないか考える
- 1食だけご飯の量を少し減らす
- 肉よりも魚を食べる頻度を増やす
- 野菜の割合を増やす
- 間食はガムで我慢する
- デザートは果物を食べる
- お酒の頻度を週1回減らす
- 普段の飲み物をお茶にする
- 運動量を増やせないか考える
- 階段を使うようにする
- 通勤時や帰宅時に歩く距離を増やす
- 電車では常に立つようにする
- テレビを見ながらストレッチをする
- 1日に10分だけ運動の時間を確保する
すぐにでも身に付けられる習慣はあるのではないでしょうか。
この程度のことでも積み重ねれば大きなダイエット効果になりますし、
習慣化できれば頑張らなくても自然と脂肪は減っていきます。
他にも簡単に習慣化できる行動についてまとめているので、
ぜひこちらもご覧ください。